成人喘息は、気道の慢性炎症、可逆性のある種々の程度の気道狭窄と気道過敏症の亢進、そして臨床的には繰り返し起こる咳、喘鳴、呼吸困難で特徴付けられる閉塞性呼吸器疾患である。
「一般社団法人 日本アレルギー学会:喘息予防・管理ガイドライン2012」より
ここで重要なのは成人喘息の正体は気道の慢性炎症である事です。
この度、当クリニックにおいて“気道の炎症状態“を評価するために、呼気中NO濃度測定をする新しい喘息の検査機器を導入しました。
呼気中のNO(一酸化窒素)の濃度を測定する検査です。
喘息患者さんの気道には炎症があり、炎症性刺激により、主に気道上皮のNO合成酵素(INOS)が誘導され、大量のNOが産生されています。
そのため呼気中NO濃度を測定することで好酸球性気道炎症の存在や程度を知ることができるとされています。
喘息患者さんの気道には、炎症があります。
炎症が起きると炎症性サイトカインが分泌され、気道上皮で誘導型一酸化窒素合成酵素(INOS)という一酸化窒素(NO)を作る酵素が増え、大量のNOが産生されます。
このNOを測定するのが呼気NO濃度測定検査です。
実は、喘息患者の呼気中で増えるガスはNOだけではなく、一酸化炭素やエタンの濃度も炎症に伴って上昇します。
CO・エタンなどは慢性閉塞性肺疾患(COPD)でも上昇しますが、NOは喘息で特異的に上昇するため、COPDとの鑑別診断も可能です。
18歳以上の日本人健常者を対象に行われた試験結果により、日本人の成人健常者における呼気NO濃度の正常値は約15ppb、正常値の上限値は約37ppbと算出されました。
厚生労働科学研究「気道炎症モニタリングの一般臨床応用化:新しい喘息管理目標の確立に関する研究」
ステロイド未治療の喘息患者と健常者を対象にNOを測定した試験結果より、吸入ステロイドを未使用の新患患者で、発作性の喘鳴など喘息を疑わせる症状に加え、呼気NOが22ppb以上ならば、喘息の可能性が高く、37ppb以上であれば、ほぼ確実に喘息と診断できることがわかりました。
呼気NO濃度測定検査は、2〜3分と短時間で測定でき、患者さんの負担が比較的少なく、小児、高齢者でも繰り返し施行できる簡便な検査です。
呼気NOを測定する際に、数値に影響を及ぼす因子があります。
診療の際にわかる範囲で結構ですのでお伝えください。
現喫煙は優位にNO濃度を低下させ、鼻炎の合併は優位に呼気NO濃度を上昇させる。
現喫煙は優位にNO濃度を低下させ、鼻炎の合併は優位に呼気NO濃度を上昇させます。患者さんの背景因子を加味した上記の呼気NO基準値を超えると喘息の可能性があります。
また喘息の診断だけでなく、呼気NO濃度をガイドにしながら治療調節を行うことで、吸入ステロイド薬の使用量を抑え、喘息の増悪回数も減少させることができたという試験結果より、患者さん毎により適切なステロイド薬剤の用量調節に繋がり、治療の効率化にもつながります。
症状を放っておくと、憎悪に繋がる可能性があります。
ごく初期段階で治療介入することで、速やかな抗炎症治療が可能となります。
喘息の治療は、症状発現のごく初期段階で抗炎症治療を強化することが重要です。
これまでの治療に呼気NO濃度測定検査を加えることによって、気道の炎症状態を知ることができ、より効率的な治療が可能になります。
喘息治療の最終目標である“健康な人と変わらない生活”を目指して一緒に喘息コントロールに取り組みましょう。
Copyright © 町田駅徒歩1分の佐藤寿一クリニック All Rights Reserved.