新型コロナウイルス感染症の陽性患者さんはパルスオキシメーターが必ず必要となります。お持ちでない方は申し込めば東京都から配送されます。
詳しくは東京都福祉保健局のページをご覧ください
新型コロナウイルス感染症の検査で陽性であった方のうち、無症状、または医学的に症状が軽い方については、自宅療養を行なっていただく場合があります。
当院でもPCRで陽性になった時に保健所に届出をするだけで、それ以降の対応は、すべて保健所の管理下になります。
そのため、入院先を見つけてあげたりとかできないため、保健所から連絡があるまでは自宅待機をお願いするしかありません。
その時に、気をつける事をアドバイスするしかないので、以下にまとめてみました。
表情・外見 | ・顔色が明らかに悪い ・唇が紫色になっている ・いつもと違う、様子がおかしい |
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息苦しさ等 |
・息が荒くなった(呼吸数が多くなった) ・急に息苦しくなった ・生活をしていて少し動くと息苦しい ・胸の痛みがある ・横になれない。座らないと息ができない ・肩で息をしている ・突然(2時間以内を目安)ゼーゼーしはじめた |
意識障害等 |
・ぼんやりしている(反応が弱い) ・もうろうとしている(返事がない) ・脈がとぶ、脈のリズムが乱れる感じがする |
一般の人は、およそ次のようにイメージしているといいます。
ところが、医師は次のようにイメージしています。
もちろん、医師のイメージのほうが現実に近いものです。
中等症は、一般の人が考えているより苦しく、重症は、一般の人が考えているより「はるかに」危険な状態です。
コロナの初期症状は風邪の症状と区別がつきにくくて、発熱の具体とか症状の重症度や種類は個人差が大きいのですが、予後については、特に関連はあまりありません。
人工呼吸器やエクモに繋がったり、死亡と関連する免疫反応から起こる肺炎は感染後、4日から1週間目からおこってきます。
これの発見に役立つのは自覚症状ではありません。自宅待機している方にとっては、酸素飽和度の低下のみが重症化を示唆するきっかけになるのです。
特に、オミクロン株では、症状は軽くても、ニ次的に起こってくる自己免疫反応による肺炎は60歳以上なら、症状は軽い人もいるかもしれませんが、必ず発症してくると考えておいた方がいいです。
症状の深刻さを知るとコロナを正確に恐がることができます。今一度、コロナを強く警戒するようにしたいものです。
以下は、「新型コロナウイルス感染症診療の手引き第5版」厚生労働省版に基づき、中等症と重症について解説します。
中等症の「中」という文字を誤解しないでください。これは「マイルド」という意味ではなく、重症に近づいていると理解してください。
同じく重症も、簡単に「病気が重くなっている」と考えないでください。コロナ感染症の重症は、危険な状態であることを理解する必要があります。
重症は1.6%、死亡は1.0%
厚生労働省によるとコロナ感染症の重症化率と死亡率は次のとおりです。
重症化率でカウントされる重症とは、
1)集中治療室で治療を受けた
2)人工呼吸器を使って治療を受けた
3)死亡した、などとなっています。
死亡も重症化率にカウントされています。
したがって、上記の死亡率1.0%は、全体の1.0%ということになります。
つまり、1,000人がコロナ感染症を発症したら、16人が重症になり、そのうち10人が死亡していることになります。
厚生労働省は無症状率と軽症率と中等症率は公表していません。
ただ、重症+死亡が1.6%なので、無症状率+軽症率+中等症率は98.4%ということになります。
軽症の場合、経過観察のみで自然に軽快するか、対処療法で治りますが、ただ、コロナ感染症による死者のうち7割は陽性(感染)が判明した当初は軽症か無症状でした。
したがって、98.4%が無症状・軽症・中等症だからといって、この病気を軽くみることはできません。
中等症1は次のように定義されています。
中等症1の診療のポイントは次のとおりです。
呼吸不全とは、呼吸器の機能が低下した結果、血液中の酸素濃度が危険なほど低下した状態、または、血液中の二酸化炭素濃度が危険なほど上昇した状態です。
呼吸不全の結果、臓器や組織に酸素が送られなくなり、それらの機能は低下します。――ここまで至らない状態が中等症1です。
ただ呼吸困難は起きています。呼吸困難は、呼吸がしづらい、息が詰まる、空気を吸えないといった症状のことを指します。
肺炎も苦しい病気で、胸の痛み、激しい咳、そして呼吸困難が起きます。
そのため中等症1でも入院が必要である、としているわけです。
中等症2は、1より悪化したものの重症には至っていないケースで、次のように定義されています。
中等症2の診療のポイントは次のとおりです。
酸素飽和度93%をかなり噛み砕いた表現を使って評価すると「医者があせり始める」数値です。そして患者さんは呼吸不全によって、相当苦しんでいるはずです。
通常の病院に入院している患者さんが酸素投与をしなくてはならないコロナ感染症の中等症2に進んでしまったら、その病院の医師は、高度な医療を提供している病院に転院させることを検討しなければならないわけです。
コロナ感染症の重症の定義は次のとおりです。
重症の診療のポイントは次のとおりです。
もう酸素飽和度の基準がありません。酸素飽和度で病状を測るレベルではないという意味です。
人工呼吸器は、酸素投与よりさらに強く酸素を送る方法です。
酸素投与はただ酸素を肺に送っているだけですが、人工呼吸器はより濃度の高い酸素を送ると同時に、高い圧をかけて肺を広げます。
つまり人工呼吸器は、強制的に呼吸をさせる装置といえます。
重症患者さんを診ている医師は、エクモ(extracorporeal membrane oxygenation、体外式膜型人工肺)を使うかどうか厳しい判断が求められます。
重症患者さんの容態がさらに悪化すると、人工呼吸器でも呼吸させられなくなります。そのとき、患者さんから人工呼吸器を外してエクモにつながなければなりません。
エクモは人工肺です。
患者さんの肺ではもう、酸素を血液に取り入れて、血液から二酸化炭素を取り出すことができないので、患者さんの体内から血液を取り出してエクモに送り、エクモでその血液に酸素を取り入れて患者さんの体内に戻します。
体内の血液を外に体外に出して装置(エクモ)のなかに入れてまた体内に戻すので、かなり重大な治療といえます。
厚生労働省の「新型コロナウイルス感染症(COVID-19) 診療の手引き・第10.1版」では、軽症〜中等症Tの治療には抗ウイルス薬を優先して検討することが推奨されています(図1)
特に、重症化リスクの高い患者さんは、診断時は軽症でも後日病状が悪化することがあるので、発症後早期に抗ウイルス薬を投与することで入院や死亡を減らすことが期待されます。
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