マスクで感染リスクを最小限に

コロナ感染リスクを経路別に数値化

近畿大学環境医学・行動科学教室准教授の東賢一氏らの研究チームは、医療現場における新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)への感染リスクを「空気感染」「飛沫感染」「接触感染」の経路別に推算するモデルを構築。患者と医療従事者が近接する状況下で、SARS-CoV-2感染リスクへの寄与率の数値化に成功した。その結果、主な感染経路は飛沫感染だが、接触感染や空気感染の可能性もあることが明らかとなった(Environ Int2020; 147: 106338)。

サージカルマスクやフェースシールドなど感染対策の効果も算出

東氏らは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)入院患者のケアに当たる医療従事者の感染リスクについて、経路別に評価するモデルを構築。シミュレーションにより感染リスクを算出した。

想定した感染経路、患者と近接時(0.6m間隔)

  • @患者の呼吸による飛沫核を直接吸入する空気感染
  • A患者の咳による飛沫核を直接吸入する空気感染
  • B患者の飛沫を直接吸入する飛沫感染
  • C患者の飛沫が顔の粘膜に直接付着する飛沫感染
  • D患者の飛沫が付近にある物体の表面に付着し、手指を介して顔の粘膜にウイルスが付着する接触感染
  • E手指に直接患者の飛沫が付着し、手指を介して顔の粘膜にウイルスが付着する接触感染

医療従事者が1日にCOVID-19患者1人と中程度の接触(1分間の接触を20回)をした場合と、長時間の接触(10分間の接触を6回、そのうち会話を30分間)をした場合の感染リスクについて、手洗いの頻度別に試算した。

また、医療従事者がサージカルマスクを着用、フェースシールドを着用、両方を着用した場合および、患者がサージカルマスクを着用、サージカルマスクを着用し、換気回数を1時間当たり2回から6回に増やした場合の感染リスクについてもシミュレーションを行った。

感染リスクの6〜8割が飛沫感染

全体の経路の感染リスクに対する各経路の寄与率を求めたところ、Cの飛沫感染が寄与率60〜86%と最も高かった。次いでDの接触感染の順で9〜32%だった。なお、接触時間が長く手洗いの頻度が少ない場合は、中程度の接触時間で手洗いの頻度が多い場合に比べて接触感染の寄与率が高くなった。

さらに、患者の唾液中のウイルス濃度が高くなると、空気感染リスクの寄与率は上昇。まれなケースとして、患者の唾液中のウイルスが極めて高濃度で下気道における感染リスクを高く見積もった場合、@とAの飛沫核による空気感染リスクの寄与率は5〜27%まで上昇した(図)。


SARS-CoV-2感染リスクに対する経路別寄与率

(近畿大学プレスリリース)

また、感染リスクは医療従事者がサージカルマスクを着用した場合は63〜64%、フェースシールドを着用した場合は97〜98%、両方を着用した場合は99.9%以上いずれも低減できることが判明した。

一方、感染リスクは患者がサージカルマスクを着用した場合は99.99%以上低減し、サージカルマスクを着用した上で換気回数を毎時2回から6回に増やした場合は、さらにその半分以下になることも試算された。

研究チームは「以上から、SARS-CoV-2感染予防においては、医療現場では医療従事者がサージカルマスクやフェースシールドを着用することの有用性および患者がサージカルマスクを着用し、換気を適正に保つことの重要性が示された」と結論。今回の研究成果について「接客を伴う飲食や介護現場など、人と人とが近接する場面での感染対策に応用されることを期待している」と付言している。

ウレタンマスクはNG?広まる“不織布”推奨の動き

新型コロナ“第3波”による感染拡大が続くなか、改めて注目されているのが「マスクの素材」です。

各地の病院では、不織布マスクの着用が推奨されています。先日、行われた東京・杉並区の成人式では、会場内での不織布マスクの着用が求められていました。

一般的にマスクといえば、不織布マスクに、ウレタン素材のマスク、さらに布製マスクがあります。

マスク素材別の粒子除去性能の比較グラフと性のうちは以下の通りです。ウレタンマスクの素材である「ポリウレタン」は5μm(マイクロメートル)以下の粒子だと、除去率は1%以下。ほぼ効果がないことがわかります。


下記のグラフでは、N95マスクが一番飛沫を減少させ、次にサージカルマスクが効果高いことがわかります。

去年、公表されたスーパーコンピューター「富岳」によるシミュレーションの映像では、不織布のマスクはせきをしてもほとんど飛沫(ひまつ)が飛ばないのに対し、布やウレタンのマスクは細かい飛沫が前方に多く飛散しているのが分かります。

このシミュレーションでは、不織布マスクは吐き出した飛沫を80%カットするのに対し、ウレタンマスクは50%ほどのカットにとどまりました。

専門家は「場面に応じたマスク選びが必要」

広がる不織布マスクの着用を求める声について、専門家は、あくまで場面に応じたマスク選びが必要だと指摘します。

聖路加国際大学の大西一成准教授は、「あまり人のいない公園で、一人でジョギングするような場合、ウレタンマスクを着けてジョギングをすることは考えられるが、一方で人がいる時に、飛沫を飛ばす可能性があるマスクを着けていると、他の人が見た場合、不快な思いをされるというのはあり得る話だと思う。マスクの種類とマスクの機能を知ったうえで使い分けるということ。お互いがそれをできないと、マスクを使った感染対策にならない」と話していました。

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