HPVワクチン

HPVワクチンについては、接種後に出現する広範な疼痛、 運動障害について現在専門家の間で検討中であり、積極的な勧奨(個別に接種を勧める内容の文書をお送りすること)を一時的に控えています。

しかしながら、 HPVワクチンが定期接種として接種できることに変わリはなく、接種を希望される方に対しては、接種を行っていただいています。

HPVワクチンに関する知識がない方、接種すべきか判断できずに困っている方、接種に不安を抱いている方などが多くおられます。そのような方々に、適切な情報提供をお願いしたいと考えています。

ワクチンの有効性について

ヒトパピローマウイルス(HPV)と子宮頸がんについて

子宮頸がんについては、HPVが持続的に感染することで、異形成を生じた後、浸潤がんに至ることが明らかになっています。HPVに感染した個人に着目した場合、多くの感染者で数年以内にウイルスが消失しますが、その内数%は持続感染-前がん病変(高度異形成、上皮内がん)のプロセスに移行し、さらにその一部は浸潤がんに至ります。

性交経験のある人の多くは、HPVに一生に1度は感染すると言われています。我が国においては、ほぼ100%の子宮頸がんで高リスク型HPVが検出され、その中でもHPV16/18型が50〜70%を占めます。

我が国では年間約1.1万人の子宮頸がん罹患者とそれによる約2,800人の死亡者を来す等、重大な疾患となっています。子宮頸がん年齢階級別罹患率は20代から増加し、40代でピークを迎えます。

子宮頸がん自体は、早期に発見されれば予後の悪いがんではありませんが、妊孕性を失う手術や放射線治療を要する

2023年4月1日より、9価HPVワクチン シルガードR9が定期接種の対象になりました。

2023年4月1日より、9価HPVワクチン シルガードR9が定期接種※1の対象になりました。

また、2023年3月より、9歳以上15歳未満の女性においてシルガードR9の2回接種が可能となり、定期接種においてもシルガードR9の2回接種が認められています※2。

今回は、シルガードR9の2回接種に関する情報も含めたナレッジチェックを5つご用意しました。シルガードR9に関する情報の整理にお役立てください。

※1 HPVワクチン定期接種は、小学校6年生〜高校1年生相当の女子(11歳〜16歳)、キャッチアップ接種は、平成9年度生まれ〜平成18年度生まれの女性(16歳〜26歳:令和5年時点)を対象に実施されています。

※2 シルガードR9の用法及び用量:9歳以上の女性に、1回0.5mLを合計3回、筋肉内に注射する。通常、2回目は初回接種の2ヵ月後、3回目は6ヵ月後に同様の用法で接種する。9歳以上15歳未満の女性は、初回接種から6〜12ヵ月の間隔を置いた合計2回の接種とすることができる。

子宮頸がんは発症年齢が出産や働き盛りの年齢と重なることもあり、女性の人生に大きな影響を及ぼすことが多い疾患です。HPVワクチンの接種環境が整うことにより、日本における子宮頸がんの予防が促進されることを願っております。

こちらのグラフは、2019年時点における日本を含む各国のHPVワクチン接種プログラム対象女子の推定接種完遂率を示したグラフです。

HPVワクチン接種への各国の取り組みは、接種対象者の年齢、性別、実施場所などさまざまです。

こちらは、各国におけるHPVワクチン接種プログラム対象女子の推定接種完遂率を示したグラフです。推定接種率が80%を超える国もある一方で、日本では0.3%にとどまっています。

なお、厚生労働省より発表された2019年の定期の予防接種実施者数から算出した日本のHPVワクチン接種率は1.9%となっています。

日本国内では、2010年12月からHPVワクチンの緊急促進事業が始まり、2011年の後半には接種者数が約40万人とピークに達しました。しかし、2013年6月の接種勧奨差し控えをきっかけにほぼ0に近い接種者数となりました。2017年後半から少しずつ接種者数は増えていますが、2021年11月26日の定期接種の積極的な接種勧奨の差し控え終了と個別勧奨に関する通知の発出以降も、ピーク時の半分未満の接種者数となっています。

シルガードR9は、9つのHPV型をカバーするHPVワクチンです。シルガードR9に含まれるHPV型には、尖圭コンジローマなどの原因となる低リスク型と子宮頸がんなどの原因となる高リスク型の両方が含まれています。

シルガードR9は、ガーダシルRの4つのHPV型に、さらに5つのHPV型が加わったことで、より幅広いHPV型に対する疾患の予防が期待できるHPVワクチンです。シルガードR9には、低リスク型のHPV型が2つ、高リスク型のHPV型が7つ含まれています。

日本における浸潤性子宮頸がんのHPV型分布を調べた研究では、浸潤性子宮頸がん患者さんの90.8%がいずれかのHPVに感染していたことが報告されています。そのうち、HPV単感染患者の88.2%で、シルガードR9に含まれるHPV16/18/31/33/45/52/58型が検出されています。

2023年3月に、シルガードR9の用法及び用量が変更され、9歳以上15歳未満の女性において2回接種が可能となりました。

シルガードR9の用法及び用量はこちらのとおりです。

9歳以上の女性に、1回0.5mLを合計3回、筋肉内に注射する。9歳以上15歳未満の女性は、初回接種から6〜12ヵ月の間隔を置いた合計2回の接種とすることができる。

用法及び用量に関連する注意

@ 9歳以上の女性に合計3回の接種をする場合、1年以内に3回の接種を終了することが望ましい。なお、本剤の2回目及び3回目の接種が初回接種の2ヵ月後及び6ヵ月後にできない場合、2回目接種は初回接種から少なくとも1ヵ月以上、3回目接種は2回目接種から少なくとも3ヵ月以上間隔を置いて実施すること。

A 9歳以上15歳未満の女性に合計2回の接種をする場合、13ヵ月後までに接種することが望ましい。なお、本剤の2回目の接種を初回接種から6ヵ月以上間隔を置いて実施できない場合、2回目の接種は初回接種から少なくとも5ヵ月以上間隔を置いて実施すること。2回目の接種が初回接種から5ヵ月後未満であった場合、3回目の接種を実施すること。この場合、3回目の接種は2回目の接種から少なくとも3ヵ月以上間隔を置いて実施すること。

B 同時接種
医師が必要と認めた場合には、他のワクチンと同時に接種することができる。

シルガードR9の国内第V相試験(066試験)では、シルガードR9を初回および6ヵ月の2回接種し、最終接種1ヵ月後(7ヵ月目)までの免疫原性が検討されました。

こちらに、各HPV型(6、11、16、18、31、33、45、52および58型)の抗体陽転率をお示しします。

いずれの型においても、2回目接種1ヵ月後(7ヵ月目)の抗体陽転率は100%でした。

注射部位の副反応は、シルガードR9接種後5日間に104例中92例(88.5%)に認められました。10%以上の発現率で認められたものは、疼痛91例(87.5%)、腫脹29例(27.9%)、紅斑20例(19.2%)、そう痒感18例(17.3%)でした。

また、全身性の副反応は、シルガードR9接種後15日間に104例中16例(15.4%)に認められました。2%以上の発現率で認められたものは、発熱7例(6.7%)、頭痛3例(2.9%)でした。

なお、重篤な副反応、接種中止に至った副反応および死亡例は認められませんでした。

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