現在、日本では未曽有の超高齢社会を迎えています。
内閣府の「高齢社会白書(平成26年版)」によると、2013年の65歳以上の高齢者人口は3,190万人(男性1,370万人、女性1,820万人)、高齢化率(総人口に占める65歳以上の人口の割合)は過去最高の25.1%とされています。
そのような状況のなか、看護を必要とせず、自立した生活を送ることのできる、いわゆる健康寿命と平均寿命のギャップが大きな社会問題となっています。
要介護の原因の16.7%、要支援の原因の32.1%を骨折・転倒および関節疾患という運動器疾患が占めています(「平成22年国民生活基礎調査の概要」より。)
つまり、運動疾患は健康寿命と平均寿命のギャップ形成に重要な役割を果たしているのです。
よくある運動器疾患として、骨粗しょう症、変形性関節症、変形性脊髄症による脊柱管狭窄症、サルコペニアなどがあります。
これらは疼痛、関節稼働域制限、筋力低下、バランス能力低下などをきたし、人の移動機能を低下させます。
高齢者の場合、これらが関係し合い、複合して移動機能を低下させるという特徴があります。症状が進行すると日常生活を制限し、要介護状態につながります。
この運動器の障害によって、「立つ」、「歩く」機能が低下した状態がロコモティブシンドローム(ロコモ)です。いわゆる未病の状態から、日常生活活動に困難さを生じ、医療的介入が必要となる状態までを含んでいます。
2006年から、「要介護状態をできるかぎり防ぐ(遅らせる)こと、そして要介護状態にあってもその悪化をできるかぎり防ぐこと」を目的として、「介護予防」制度が開始されました。
運動器の機能向上プログラムはその重要な柱の1つと位置づけられています。高齢者の自立や生活機能の改善には様々な介入方法が提案されていますが、運動器の機能向上、すなわちロコモの予防や改善が重要であることは、これまでにも指摘されてきました。
その結果、複合的な運動トレーニングにより転倒を減少させうること、十分な強度の筋力強化訓練によりサルコペニアを改善させうること、運動の種類を問わず、十分な頻度と量の運動介入により痛みを有する高齢者の関節痛(特に膝痛)の軽減が期待できることなどがわかっています。
ロコモーショントレーニング(ロコトレ)は、ロコモ予防のための最小限かつ中心的な運動として推奨されています。下肢筋力をつける「スクワット」(図1)とバランス能力をつける「開眼片脚立ち(開眼片脚起立)」(図2)からなります。
この方法で行うスクワットは簡単で、下肢筋力全体の強化に効果的で、また膝の痛みが出にくいです。1回当たり10〜12秒かけて、5〜15回を1日2〜3セット行います。
バランス能力を強化し、転倒予防効果があります。片脚を5〜10cm上げて、他方の脚で立ちます。転倒しないように必ず掴まるものがある場所で行います(a)
立位が不安定な場合は机などに手をついたり(b)
指をついたり(c)して行います。
左右各1分間を1日3回行います。
ロコトレプラスは、ロコトレにプラスするとよい運動として推奨されています。踵上げの動作を繰り返す「カーフレイズ」(図3)、片脚を前方に振り出して腰を沈める「フロントランジ」(図4)の2種があります。
両足をやや開いて立ち、ゆっくり踵を上げてゆっくり下ろします。この動作を10〜20回を1セットとし、1日1〜3セット行います。踵を上げ過ぎるとバランスを崩す危険があるので、踵は少し浮かせる程度とします。不安定な場合は机や壁などに手をついて行います。
下肢全体の筋力強化に役立ちます。上体は胸を張って前傾しないように気をつけながら行います。5〜10回を1セットとして1日1〜3セット行います。
高齢者の方はバランスを崩す危険があるので注意してください。
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