RSウイルスはかぜ症候群を引き起こすウイルスの一種です。
パラミクソウイルス科のニューモウイルス亜科に属するRNAウイルス、年長児以降に感染してもほとんどは軽い上気道炎にとどまるが、特に生後6ヶ月以下の乳児が感染した場合には急性細気管支炎をひき起こし、しばしば呼吸困難をきたします。
最も頻度の高い感染症であり、鼻腔、咽頭、咽喉などの上気道粘膜の急性カタル性炎症の総称です。軽い鼻症状が主体の普通感冒から全身症状の強いインフルエンザまで様々なものが含まれるが、80〜90%ウイルス感染によるもので、通常は自宅療養で一週間以内に自然治癒します。主な感染経路は。飛沫感染や手指を介した接触感染であり、予防が重要です。
予防のためのワクチンに関しては以下のものがあります。
2023年9月イギリス製薬会社のグラクソスミスクライン社の開発した60歳以上を対象としたワクチンが発売されました。
2024年1月妊娠中の母親が接種して子どものRSウイルス感染症を予防するワクチンが承認されました。本剤はRSウイルスに対する国内初の母子免疫ワクチンであり、妊婦に接種することにより、母体のRSウイルスに対する中和抗体価を高め、それが胎児に移行し、出生時から乳児におけるRSウイルスを原因とする下気道疾患を予防することが期待されます。
臨床病型 | 主な原因ウイルス | 症状、所見 |
---|---|---|
普通感冒 | ●ライノウイルス ●コロナウイルス |
●鼻汁 ●鼻閉 ●くしゃみ |
インフルエンザ | ●インフルエンザウイルス | ●発熱 ●頭痛 ●筋肉痛 ●全身倦怠感 |
咽頭炎症候群 | ●アデノウイルス ●バラインフルエンザウイルス |
●咽頭痛●発熱 |
咽頭結膜熱 | ●アデノウイルス | ●発熱 ●咽頭炎 ●結膜炎 |
ヘルパンギーナ | ●コクサッキーウイルスA群 B群 ●エコーウイルス |
●咽頭痛 ●咽頭粘膜の小水疱・潰瘍 |
クループ | ●パラインフルエンザウイルス ●RSウイルス ●アデノウイルス |
●吸気性喘鳴 ●犬吠様咳嗽 ●嗄声 |
RSウイルスは世界中に広く分布しており、ほぼすべての乳幼児が2歳までに感染するとされています。
乳児の細気管支炎やウイルス性肺炎の主な原因であり、特に生後6ヶ月未満で感染すると重症化するといわれています。 日本では毎年約12万〜14万人の2歳未満の乳幼児がRSウイルス感染症と診断され、その約4分の1が入院を必要とすると推定されています。RSウイルス感染症による2歳未満の乳幼児の入院は、基礎疾患を持たない場合も多く、生後1〜2か月時点でピークとなるため、生後早期から予防策が必要とされています。日本ではRSウイルス感染症は感染症法で5類感染症に指定されており、小児科定点医療機関の届出に基づき、流行状況が探知されています。
RSウイルス感染症は、冬季を中心に流行し、乳幼児に重篤な呼吸器感染症を起こすことが最も多いウイルスです。RSウイルス感染症は、最初の一年間で50〜70%以上の乳児が罹患し、3歳までにすべての子どもが抗体を獲得すると言われています。
2〜8日の潜伏期の後、大人や年長児が感染した場合、発熱、鼻水などの上気道炎症状でおさまります。赤ちゃんが感染した場合も発熱、鼻水、せきなどの普通のかぜの症状だけのこともありますが、その後咳がひどくなる、喘鳴がでる、呼吸困難となるなどの症状がでて、場合によっては細気管支炎、肺炎になることがあります。1歳以下では中耳炎の合併症がみられることがあります。通常7〜12日、入院した場合も多くは3〜4日で改善します。RSウイルス感染症は十分な免疫がつきにくいため何回も感染することがあります。
小児の細気管支炎や肺炎など、下気道疾患による入院数の増加のほとんどは、RSVの活動性と一致すると考えられている。もちろん、A型インフルエンザウイルスも同時期に小児における気道疾患の増加する原因となるが、ピークは常に入院の増加につながるとは限らず、ほとんどの場合は、RSV感染症とインフルエンザの流行のピークは一致しないとされる。
RSVは乳幼児における肺炎の約50%、細気管支炎の50〜90%を占めると報告されており、より年長の小児においても気管支炎の10〜30%に関与していると考えられている。一方、呼吸器症状のない患者から分離されることは滅多にない。通常、すべての新生児では母体からの移行抗体が母体と同レベル認められるが、徐々に減少し、7か月以降に検出される抗体は通常、生後の自然感染によるものである。しかしながら、血中で検出される抗体は即座に感染防御を意味せず、抗体が存在している生後6ヶ月以内でもっとも重症化する。最初の一年間で50〜70%以上の新生児が罹患し、3歳までにすべての小児が抗体を獲得する。肺炎や細気管支炎などのRSVによる下気道症状は、ほとんどの場合は3歳以下で、入院事例のピークの2〜5か月齢にあるが、最初の3〜4週齢では比較的少ない。また、年長児や成人における再感染は普遍的に見られるが、重症となることは少ない。
A RSウイルスは主に接触感染と飛沫感染で感染が広がります。接触感染は、RSウイルスに感染している人と直接の接触や、感染者が触れたことによりウイルスがついた手指や物品(ドアノブ、手すり、スイッチ、机、いす、おもちゃ、コップ等)を触ったり、なめたりすることで感染することを言います。また、飛沫感染は、RSウイルスに感染している人が咳やくしゃみ、あるいは会話などした際に口から飛び散るしぶきを浴びて吸い込むことにより感染することを言います。RSウイルスは、麻疹ウイルスや水痘ウイルスの感染経路である空気感染はしないと考えられています。
RSVの初感染は常に顕性であるが、軽症の感冒様症状から重症の細気管支炎や肺炎などの下気道疾患に至るまで様々である。しかしながら、初感染においては下気道疾患を起こす危険性は高く、69%の乳児が生後最初の一年間でRSVに罹患する。そのうちの1/3が下気道疾患を起こすと報告されている。2年目から4年目においても下気道疾患を起こす比率は20%を超え、無視できるものではないが、その重症度は年齢を追う毎に減弱する。乳幼児期早期には肺炎と細気管支炎が多いが、徐々に気管支炎の病態を呈するものが増加してくる。初感染の病像として、上気管支炎や気管支炎の場合でも症状は比較的強い。特に1歳以下では、中耳炎の合併がよくみられる。生後4週未満ではRSV感染の頻度は低いが、罹患した際には呼吸器症状を欠く非定型な症状をとることが多く、診断の遅れにつながる。この年齢では、突然死につながる無呼吸が起きやすいことも報告されており、注意が必要である。
潜伏期は2〜8日、典型的には4〜6日とされているが、発熱、鼻汁などの上気道炎症状が数日続き、その後下気道症状が出現してくる。発熱は初期症状として普通にみられるが、入院時には38℃以下になるか、消失していることが多い。咳も主要な症状ではあるが、持続、増悪する咳は下気道疾患への進展を示唆する。特に細気管支炎と肺炎の鑑別は必ずしも容易ではなく、またしばしば合併する。
罹病期間は通常7〜12日で、入院例では3〜4日で改善してくるとされるが、ウイルスの排泄は持続し、ガス交換の異常も数週間続くと考えられている。胸部レントゲン上では種々のパターンがみられる。もっとも典型的なのは間質性肺炎像と過膨張であるが、air-trappingが唯一の有意な所見であることもある。肺胞性陰影はRSVによる下気道疾患の1/4にみられるが、特に6ヶ月以下の乳児に多い。一般検査所見ではあまり特徴的なものはなく、白血球数は増加する例もあるが、RSV確定例の20%程度であり、白血球分画も一定の傾向はない。
RSVの再感染は普遍的に認められ、縦断的な調査では毎年6〜83%の小児が再感染を経験していると報告されている。通常は軽症の上気道炎や気管支炎であるが、幼児では20〜50%以上の症例で下気道疾患がみられる。成人ではいわゆる普通感冒を起こすのみであるが、特にRSVに感染した小児を看護する保護者や医療スタッフでは、気管支炎やインフルエンザ様症状をきたし、より重症になることがある。これは、初感染児より排出される大量のウイルスに暴露されるためと考えられている。また、RSVは高齢者においても、特に長期療養施設内での集団発生が問題となる。同様に、免疫不全者における院内感染事例では症状が重篤で、しかもある程度蔓炎する。
子どものRSウイルス感染症の予防は3つの方法があります。
1つ目は、生まれてくる赤ちゃんの感染を予防するために妊娠中の母親が接種するRSウイルスワクチン(不活化ワクチン)です。
2024年1月、妊娠中の母親が接種することで、おなかの赤ちゃんに免疫をつけ、出生直後ら赤ちゃんのRSウイルス感染症を予防するワクチンが承認されました。
2024年4月現在、発売時期は未定ですが、これにより生後6ヶ月位までのRSウイルスへの感染や重症化を防ぐことができるようになります。
アブリスボ筋中用の開発は、米国国立衛生研究所(NIH)による融合前Fタンパク質の結晶構造等に関する基礎研究基づいています。
Fタンパク質は、RSウイルスがヒト細胞に侵入する際に利用される分子デバイスです。
本研究で、RSウイルスの融合前Fタンパク質をベースとするワクチン、RSウイルス感染を予防する可能性があることが示唆されました。
このNIHの発見に基づき、ファイザーは多数の融合前Fタンパク質構造体を評価、非臨床研究で強力な抗ウイルス免疫応答を誘導するワクチン抗原を特定しました。本剤は、RSウイルスAおよびBそれぞれのFタンパク質の組み換え体を含有する二価ワクチンです。
2つ目は、ワクチンはありませんが、RSウイルス感染症の重症化を予防する予防薬としてモノクローナル抗体製剤です。米国では、妊娠中にRSウイルスワクチンを受けなかった母親の子どもでRSウイルス流行期に生後8ヶ月未満の乳児を対象するRSウイルス感染予防薬(モノクローナル抗体製剤)が推奨されています。日本では、2023年2月に承認申請されています。
※産婦人科学会の規定により、産婦人科での接種をお願いいたします。
3つ目は、従来からあるRSウイルス感染症の予防注射(シナジス)です。
予定日よりも早く生まれた赤ちゃん(早産児)、生れつく呼吸器や心臓に病気を持っている赤ちゃん、免疫不全をともなう赤ちゃん、ダウン症候群の赤ちゃんは、「シナジス」が保険適応となります。RSウイルス流行期には毎月1回筋肉内投与を行い、RSウイルスに感染したときの重症化を抑えます。
2歳までに約8割が1度は感染する「RSウイルス」は早産児や心疾患などを持つお子様が感染した場合に重症化する可能性があります。この重症化を防ぐ目的で作られたのがシナジスです。
弱体化させたウイルスを体内に取り込んで抗体をつくらせるワクチン(予防接種)とは異なり、抗体そのものを体内に取り入れ、RSウイルスの増殖を防ぎます。予防には違いありませんが、体内で抗体を作れるようになるわけではありませんので、定期的な接種(1ヶ月に1回)が必要になります。
シナジスはワクチンではなくRSウイルスに対する抗体成分を精製してつくられたものです。
他の予防接種との同時接種が可能です。予防接種のスケジュールには影響ありませんので、ご安心ください。
RSウイルス(Respiratory Syncytial Virus)感染による重篤な下気道疾患の発生抑制のため下記の新生児、乳児、幼児の方が対象となります。
シナジスはRSウイルスに対する特異的抗体で、RSウイルスが体内で増殖することを防ぐことにより、RSウイルス感染による重篤な下気道疾患の発症を抑制します。
RSウイルス感染による呼吸器感染症の重症化を抑えるお薬です。RSウイルス感染症が流行する秋から春にかけて、月1回の筋肉内注射を継続して行います。
注射の開始時期や投与回数は、生まれ月や疾患により異なりますので、かかりつけの医師にご確認下さい。
注射の効果は約1ヶ月持続します。RSウイルス感染症の流行期中は効果を継続させるため、一か月ごとの注射を守るようにしましょう。
1回目の注射は流行開始前に受けると効果的です。
RSウイルス感染症予防注射はお薬でありワクチンではありません。ワクチンと同時に投与することができます。また、ワクチンの接種間隔との関連はありませんので予防接種スケジュールを変更はありません。
つまりワクチン“接種“とは「弱めたウイルスなどを注射することで、身体の中に抗体が作られるのを促すもの」で、シナジス“投与“は「RSウイルスに対する抗体そのものを注射すること」なのです。
A シナジス投与後、約1ヶ月で体内から消失してしまいます。そのため、RSウイルス流行期中に1か月に1回の投与が必要です。
通常はRS流行期の9月から翌年4月まで投与します。つまり、通常は8回投与します。
しかし、近年RSウイルスの流行が8月頃から認める傾向になっています。 流行状況に応じて、シナジス接種期間を変更する場合もありますので、投与期間についてはご相談ください。
シナジスとは、RSウイルス感染症の予防のために開発された注射です。
RSウイルスは、特に早産児・心臓・呼吸苦・ダウン症等の基礎疾患がある小さなお子様が万が一、RSウイルスに感染したときに重篤な肺炎などを引き起こすリスクが高くなるワクチンです。
シナジス注射の効果は約1ヶ月持続し、原則として流行期の9月から翌4月まで、毎月の投与を行います。
現在利用可能な予防方法としては、遺伝子組み換え技術を用いて作成された、RSVの表面蛋白の一つであるF(fusion)蛋白に対するモノクローナル抗体製剤であるパリビブマス(Palivizumab)がある。後者は日本においても、2001年1月に承認された。
これは、RSV流行開始前から流行期の間、1回15mg/kgを1ヶ月毎に筋注することにより、予防効果が期待できる。
また以下の対象者については、遺伝子組み換え技術を用いて作成されたモノクローナル抗体製剤であるパリビズマブ(Palivizumab)の投与があります。
抗ウイルス感染症の流行初期に投与し始めて、流行初期に投与し始めて、流行期も引き続き1ヶ月毎に筋肉注射することにより、重篤な下気道炎症状の発症抑制が期待できます。
パリビブマス(遺伝子組み換え)は、RSV流行期を通して、体重1kgあたり15mgを月1回筋肉内に投与する。
なお、注射量が1mlを超える場合には分割して投与する。
NICU・GCUから退院する児にパリビブマスを投与する場合には、投与後の薬剤の血中濃度の上昇に必要な時間を考慮して、退院3日前までに投与する。
また、初回投与後は、薬剤の有効血中濃度の維持期間が2回目以降の投与に比べて短いので、NICU退院後の投与は、初回の投与からの間隔を短くすることが推奨される。
シナジスは細い注射を用いて、大腿部に毎月1回、注射部位をかえて注射を行います。
体重により注射量が決まりますので、体重が増えますと、注射量も増えます。
シナジスはRSウイルス感染によって生じる重篤な肺炎などの予防をし、幼い赤ちゃんを秋から春にかけての寒い季節の期間を守ってくれます。
RSウイルスにいったんかかると、感染後はゼーゼーするような喘鳴を繰り返すこともあります。
とくに、兄弟の多い方や保育園に入られる方はRSウイルスにかかりやすくなるため、注射をお勧めしています。
33週から35週でお生れになった方で、出生した病院でシナジス注射をすすめられない方でも、希望者は当院で積極的に注射をお引き受けします。
里がえり出産や、他院のNICUで生まれたお子様も当院でシナジス注射を受け、乳児検診は通常通りに出生した病院のフォローアップ外来などでお受けになることができます。
注射に関わる費用は毎回健康保険でまかなわれます。
シナジスに適応に関しては、厳しい審査がございますのでご確認下さい。
RSウイルス感染症は乳児期以降に感染した場合は、いわゆる「かぜ」症状だけで特に合併症を起こさずに自然に治癒をします。
しかし、早産児や心疾患などの基礎疾患を持つお子様がRSウイルスに罹患すると、「急性細気管支炎」という合併症を起こして呼吸困難を起こします。
急性細気管支炎を起こすと、重症の場合は人工呼吸器管理が必要となる場合もあり、また呼吸困難の程度が強い場合にお亡くなりになるお子様がおられました。そのためRSウイルス感染予防のためにシナジスが開発されました。
以下のような、早産だった・基礎疾患があるという場合には、シナジス注射の対象となります。
以下のような合併、症状、状況にある場合には、シナジス注射に健康保険が適用されます。
RSウイルス感染症は、RSウイルスの感染によって引き起こされる呼吸器感染症です。
RSウイルスは、一般的には乳幼児の呼吸器感染症の原因ウイルスとして知られています。その一方で、高齢者や基礎疾患のある成人も、RSウイルスは、肺炎などを引き起こすこともあります。
ここでは、RSウイルスの感染を引き起こす年代や感染経路、流行時期、なぜ肺炎を起こすきっかけになるのかを説明します。
RSウイルス感染症は、日本の感染症法において「5類感染症」に定められています。
この「5類感染症」には、新型コロナウイルス感染症やインフルエンザ、風しんや麻しん、感染性胃腸炎などの感染症も含まれています。
RSウイルスは、2歳までにほぼすべての子どもが感染するとされていますが、その後も生涯にわたって何度も感染と発症をくりかえすため、乳幼児だけでなく成人、特に高齢者にも影響を及ぼす可能性もあります。
RSウイルス感染症の感染経路は、飛沫感染・接触感染です。
RSウイルス感染症は、近年は夏から増加傾向となり秋にピークがみられていました。一方、2021年以降は春から初夏に継続した増加みられ、夏にピークがみられています。今後の発生動向についてさらなる注意が必要です。
RSウイルスなどのウイルス感染がきっかけで、肺炎などが引き起こされることがあります。
高齢者や基礎疾患のある人では特に注意が必要です。
現在、RSウイルス感染症に対する治療薬は乳児において発症を抑えるお薬がありますが、成人においてはRSウイルス感染症に対する方法はありません。そのため基本的には症状を和らげるための対症療法が行われます。
市販の解熱鎮痛薬、水分補給など
必要に応じて酸素投与や人工呼吸器の使用
4〜5日
鼻水、咳などの上気道の症状や発熱、など
多くの方はそのまま数日間で回復すると言われている。一部の方は喘鳴、呼吸困難などの下気道の症状が出現し、細気管支炎や肺炎へと進展することもある。
1〜3日
悪寒、高熱、全身の倦怠感、など
通常は約1週間で軽快するが、高齢者や、呼吸器・循環器などに慢性疾患を持つ患者、免疫低下している患者では原疾患の悪化や肺炎など合併症のリスクが高まる。
2〜7日(多くは2〜3日)
発熱、呼吸器症状、倦怠感、頭痛など
鼻やのどからの上気道への感染から始まり、多くは発症から1週間程度で回復に向かうが、気管支や肺などの下気道まで発展する場合もある。
RSウイルス感染症によって、高齢者が入院、死亡にいたることも報告されています。
年間のRSウイルス感染症による発症・入院・死亡(日本・成人・推定値)
基礎疾患のある人、高齢者の方は、RSウイルス感染症の予防について学ぶとよいでしょう。
基礎疾患のある人は、その基礎疾患のない人に比べて、RSウイルス感染症の入院率比が高いことが報告されています。
日本におけるRSウイルスによる急性呼吸器感染症は発生件数は697,535件、入院件数は62,627件、院内死亡者数は4,467例と推定されました。
日本におけるRSウイルス感染者に関する推定の疫学データです。
日本における2021年の乳幼児のRSウイルス感染による受信件数は226.960件でした。
一方で、日本の60歳以上の成人におけるRSウイルスによる急性呼吸器感染症件数は697.535件であったと推定されました。
また、入院件数および院内死亡者数の推定値は、それぞれ62.627件、4.467例でした。
グラクソ・スミスクライン株式会社は2024年1月15日60歳以上を対象としたRSウイルス(RSV)ワクチン「アレックスビー筋注用」を発売しました。
国内初のRSVによる感染症を予防する高齢成人向けワクチンで、1回の筋肉内接種で用います。
アレックスビーは、膜融合前型の遺伝子組換えRSウイルスF糖タンパク質(RSVPreF3)抗原と、GSK独自のAS01Eアジュバントを組み合わせたものです。
国内承認の根拠となった第3相臨床試験(AReSVi-006試験)では、特定の基礎疾患を有する患者を含め、RSVによる下気道疾患に対して全般的に高いワクチン効果が認められました。60歳以上の方が対象です。特に基礎疾患や肺、心臓の疾患、免疫不全がある方にお勧めします。
アレックスビーのRSVPreF3とAS01Eの組み合わせは、細胞性免疫応答を高めるために独自に考案されました
アレックスビーの作用機序をご紹介します。アレックスビーは抗原RSVPreF3とアジュバントのAS01Eから構成されています。
筋肉中に投与されたAS01Eの成分であるMPLおよびQS-21は、TLR4を介したシグナル伝達によって自然免疫系を活性化させ、所属リンパ節においてgE抗原提示された抗原提示細胞(APC)が活性化されます。
その後ナイーブCD4陽性T細胞となり、gE抗原特異的B細胞の分化を促進させ、抗体応答を上昇させます。
また、AS01Eによって産生誘導されるIFN-γがCD8陽性T細胞を活性化させ、gE抗原特異的細胞性免疫を誘導します。
なお、TLRは動物の細胞表面にある自然免疫受容体の代表的なもので、TLRを介した自然免疫応答がその後の獲得免疫応答に繋がります。
TLRは、主にウイルスや細菌の表層成分を広く認識します。
以上のような機序から、アレックスビーは、自然免疫と細胞性免疫の両方を誘導すると考えられます。
アレックスビーは不活化ワクチンの一種であり、液性免疫応答を誘導する抗原と、それを増強するアジュバントシステムで構成されています。
アジュバントが入ることで、液性免疫応答及び細胞性免疫応答を持続的に誘導することが期待できます。
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