血圧は、身体の状態を調べる際に幅広く用いられています。
特に生活習慣病の場合は、患者様自身でも定期的に測る機会が多いかと思いますが、実は血圧の測定方法については、まだ不十分だと感じている点があります。
たとえば、血圧は1回測れば良いのか、それとも2回測った方が良いのか。
そもそも、今までは血圧を複数回測ったとしても、1回目の測定値を書くという医療の現場での慣習がありました。
ですが、血圧を複数回測ることで、今まで注目されていなかった、新しい脳卒中のリスクを知るヒントになることがわかっています。特に日本人の場合、血圧をコントロールすることが脳卒中の予防に大きくつながります。
通常、血圧を複数回測ったとしても数値に大きな違いはありません。
ですが、1回目と2回目で血圧が15mmHg程度も変動する方がいらっしゃいます。
この数値の大きな変動が、脳卒中を起こす危険性を持っています。
NHK「ためしてガッテン」でも、血圧の変動についてのリスクが取り上げられました。
脳卒中とは、脳梗塞や脳出血、クモ膜下出血など、脳の病気の総称です。
主に高血圧が原因となり、脳の血管が詰まったり破れたりして、脳に障害が起きてしまいます。
ところが、「主に高血圧」と書いたように、高血圧(最高血圧130mmHg以上)でなくても脳卒中のリスクがある「隠れ脳卒中体質」の方がいます。
この「隠れ脳卒中体質」は、60代のうち4人に1人が該当するとされ、たとえ血圧の値が正常範囲内であっても注意が必要です。
通常、血管は大動脈を中心に徐々に分かれていき、最終的には毛細血管となって身体の隅々の細胞にまで栄養が届けられるようになっています。
大きな木をイメージしていただければわかりやすいと思います。
しかし「隠れ脳卒中体質」の方は、脳内の血管が大動脈からいきなり細い血管(穿通枝:せんつうし)に分かれているため、細い血管は強い圧力を受け、詰まったり破れてしまいやすくなっています。
つまり、通常の高血圧の原因は塩分の摂りすぎなのに対し、「隠れ脳卒中体質」の方は血管の構造によって高血圧の状態が起きやすくなっています。
実は「脳卒中」の方は、血圧が正常なわけではありません。
普段行われている血圧測定では、結果が現れにくいというだけです。
「脳卒中」の方の血圧は、安静時には正常範囲内でも、ちょっとした運動で急激に上昇し、安静時にはまた正常範囲内に戻るという、一時的な高血圧状態が起きています。
一時的だからといっても、脳卒中が起きやすい状態であることに変わりはないので、油断は禁物です。
自分が「隠れ脳卒中体質」なのか調べる方法はとても簡単です。
「隠れ脳卒中体質」の方は、上でも書いたように、運動時に急激に血圧が上昇する傾向があります。
そのため、安静時と運動直後、2回の血圧を測定することで体質診断ができます。
具体的な計測手順は下記の通りです。
通常、立って座るといった軽い動作であれば、血圧の変化はほとんどありません。ところが、脳卒中体質の人は、ちょっとした運動や下記のような環境の変化だけでも血圧が変動してしまうのです。
1度測定した際に15mmHg以上の差があったからといって、必ずしも「隠れ脳卒中体質」かというとそうではありません。ただし、同じような結果が続くようでしたら「隠れ脳卒中体質」の可能性がありますので一度ご相談ください。
「隠れ脳卒中体質」の方も、脳卒中という病気を予防することに変わりはないので、特別な予防法は特にありません。
加齢、ストレス、高コレステロール血症、糖尿病、メタボリック症候群、喫煙などが脳卒中のリスクになりますのでこれらの生活習慣で改善できるものは実行していきましょう。
また、「隠れ脳卒中体質」の方は、大動脈につながる細い血管が一時的な強い圧力に耐えうるものでなければなりません。
そのためにポイントとなるのが、血管の柔軟性を高めることです。
有酸素運動や睡眠の質を上げることで、血管は柔軟性が回復すると言われています。
夜中に何度も目覚めたりしてしまう人は、ぐっすり眠れるような工夫をしてみましょう。
うまく寝付けない場合は、最初のうちは睡眠導入薬を使って生活習慣を改めるのも悪くはないと思います。
「隠れ脳卒中体質」の人は、知らないうちに脳血管の小さな詰まりや出血を繰り返すことも多く、将来的に脳の血管が原因で認知症など様々な影響ができます。
脳の病気の怖いところは、原因となる症状・病気は治っても、障害が残りその後の生活にも大きな支障をきたす可能性がある点です。
今のうちから自分の身体を知り、健康でいるための予防を心がけましょう。
Copyright © 町田駅徒歩1分の佐藤寿一クリニック All Rights Reserved.