私の糖尿病療法

2000年あたりを境に糖尿病の治療はなるべくSU剤以外の糖尿病薬を使って治療するようになって来ました。すなわちαグルコシダーゼ阻害剤(αGI)、チアゾリジン誘導体、速攻型インスリン分泌促進剤、ビグアナイド剤が過去十年間で治療薬として使われるようになってきました。

経口血糖降下薬の分類

インスリン分泌促進薬

  1. SU剤:グリベンクラミド、グリクラジド、グリメピリド
  2. 速攻型インスリン分泌促進薬:ナテグリド(ファスティック、スターシス)、グルファスト

ブドウ糖吸収遅延薬 αGI アカルボース、ポグリボース


インスリン抵抗性改善薬

  1. チアゾリジン誘導体(TZD):ピオグリダゾン
  2. ビグアナイド剤(BG):メトホルミン(メルビン、グリコラン)

治療の実際

明らかな肥満がある場合(インスリン抵抗性がある場合)

第一選択はメトホルミン(BG剤)

  1. まずは肥満の解消のための食事・運動療法をおこないます。
  2. 肥満の助長をしない薬剤を選択します。最初からはインスリン分泌促進薬 (SU剤、ナテグリド、グルファスト)を使わないようにします。
  3. インスリンを分泌しない薬剤を選択します(αGI、BG、TZD)。 
    この三剤いずれの薬剤を使ってもいいのですが、使い分けるポイントがあります。 
    TZDは抹消組織(筋肉、脂肪、肝臓)でのブドウ糖の利用促進と肝臓からのブドウ糖放出を抑制します。BGは肝臓からのブドウ糖放出を抑制し、腸管におけるブドウ糖吸収抑制し、抹消組織(筋肉)でのブドウ糖の利用を亢進します。
    BGの乳酸アシドーシスの頻度は非常に少ないのですが、肝臓腎臓心臓の障害の既往があれば使用を控えます。
    消化器症状としての吐き気は比較的少ないけれどもでてくる場合があります。
    食欲が抑制されて帰っていいともいえますが、胃腸障害が目立つ方は10人に1人位ですがでてきますので、その場合はBG剤を少量(一錠か二錠)からはじめれば、慣れもでてきます。 BG剤は使えば大体全例効果がでてきます。

    一方、食後高血糖などの軽症の糖尿病あるいは境界型のようないわゆる「前糖尿病」では、太い血管に動脈硬化がおこることが知られています。
    そのため「大血管症」といわれます。
    食後高血糖型の糖尿病では動脈硬化による脳、心、腎などの臓器障害を予防することにこそ治療の目標があるとされています。
    実際に糖尿病の患者さんでは心筋梗塞の危険率が上昇することがシカゴなどの外国の例では示されています。
  4. BG剤で胃腸障害がでてきたときや効果不十分なときにαGI,TZDに変更するか併用します。

体重に対する影響

  1. αGIでは体重は変わりません。
  2. BG剤では体重は不変もしくは減らす働きがあります。
  3. TZDでは効果がでると体重が増加傾向あります。
    これはTZDの作用機所からわかるようにインシュリン抵抗性を改善して血糖を下げているため、TZDの効果がでているということは脂肪におけるインシュリンの働きをよくしていることなのです。
    そのため、結果的に脂肪を増やしていることになってしまうからです。

チアゾリジン誘導体(アクトス)の使用

  1. 水分貯留するので心不全の既往のある方には禁忌です。
  2. 使ってみると効く方と効かない方に効果がはっきりわかれます。 
    SU剤のようにすぐ利く薬ではないので少なくとも4週間から8週間使ってみて効果がなければ中止します。
    すなわち、一ヵ月後にHbA1cの低下がなければTZDは漫然と使ってはいけないので、やめるべきです。
  3. 肥満が顕著な方や不思議なことに女性に聞きやすいようです。

αGI(ベイスン、グルコバイ)の使用

日本ではもっとも糖尿病専門医に好まれています。

  1. 体重増加なく、食事療法の妨げになりません。
  2. 強い消化器症状によるQOL低下がネックになるので、少量より使用し、身体を慣らしていく必要があるかもしれません。
  3. 稀に肝障害をおこすので定期的な肝機能のチェックが必要です。

痩せ型で食後血糖が高い場合(インスリン分泌低下による食後高血糖がある場合)

例えば、BMI19、FBS114、食後2時間血糖250、HbA1c7%とした場合は、食後高血糖を改善する薬剤を選択します。

  1. 第一選択薬はナテグリニドもしくはαGIになります。SU剤は選択になりません。
  2. SU特徴としてじわじわと長時間にわたって効いてくるので、食後血糖は下げないで250くらいまであがってしまうのに、通常お昼前には血糖を60台まで下げてきて低血糖気味になり空腹感が強くなってきて過食に走ってしまいます。
    すなわち、SU剤は食後高血糖の改善には不適です。
  3. ただし、ナテグリニドはSU剤ですでにうまくいっている例には適しません。血糖コントロールが悪くなってしまいます。ナテグリニドは耐糖能障害が軽度で、インスリン分泌機能低下により食後血糖の上昇が起こっている例に適しています。
  4. ナテグリニドは煩雑ではありますが、効果が早く切れますので必ず1日3回食直前に服用しなければなりません。
  5. 低血糖はほとんど起こさないのですが、ナテグリニドを飲んで食事を取らなければ低血糖を起こすかもしれません。
  6. ナテグリニドで効果不十分なときは、αGIを併用します。それでも、効果不十分なときはナテグリニドをやめて、SU剤に変更します。保険上ナテグリニドとSU剤の併用は認められていません。
    SU剤はグリミクロンHA(従来のグリミクロンに半分の量になった新製品)を使います。オイグルコンは基本的に使いません。
    オイグルコンが必要になるような場合は膵臓へのインスリン分泌の刺激作用が強すぎて、膵臓のインスリン分泌が疲弊しやすいことと、そのような場合は超速攻型インシュリンの導入のほうが血糖のコントロールを得られやすいからです。

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